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「陛下、そろそろお休みになられたほうが」
太陽王・リヴィウスに彼の首席秘書官・ニールが声をかけた。その腕には先程までリヴィウスが目を通し承認したばかりの書類の束が抱え込まれていた。
「そうだな。今日はこれで終わりにするか」
「あんな事があったのですから、今日はゆっくりお休み下さい」
ニールの言うあんな事とは、今日起きたリヴィウスに対する暗殺未遂を指していた。暗殺されようともリヴィウスは通常の量の業務をこなす。今日もすでに日をまたいでいた。
「では、私はこれで失礼させていただきますが、陛下」
「なんだ」
「今宵はどちらでお休みになられますか」
ニールにそう言われて、リヴィウスは自室がゆっくり休めるような状況ではないことを思い出した。
今日彼を狙った輩は、こともあろうに彼の執務室ごと彼を焼き払おうとしたのだ。
しかし、その企ても、彼の婚約者・ニケ姫によって阻まれ、リヴィウスは無事に救出された。
「そう、だな。ニケのところにでも行くか」
「大丈夫、でしょうか」
「この時間ならあいつは寝てるだろうし、婚約者が寝室を共にすることに問題があると思うか」
ニールは瞬時に数々の問題点を弾き出した。
正式な婚約者ではなく、傍から何か言われそうだが、それはリヴィウスの一声で収まるだろう。ニケ姫の部屋の警備の強固さを考えれば、リヴィウスが他で休むよりも安全であることは間違いない。ニケ姫が大いに騒ぎ立てそうだが、それは彼にとってさして問題ではない。それに、彼にとって主の身の安全は全てにおいて最重要項目だ。
「いえ。些細な問題だけです」
「そうか。なら、しばらくニケのところで休む」
話はニケのあずかり知らぬところで決まってしまった。