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「リビ。その、お願いがあるんだ」
彼女にしてはやけにしおらしいなと、リヴィウスはその時思った。
とは思ったのだが、所詮は愛しているが故か、彼はその疑問をあっさりと打ち消した。
「なんだ。めずらしいな」
読んでいた本を横に置き、かけていた眼鏡の隙間からリヴィウスはニケを見た。
「!!」
目にした光景に、リヴィウスは思わず目を見開き、そして、咄嗟に目を逸らした。
「お、おまっ。それっ、一体、どして」
何を言っているのかわからないが、自分でも何を言いたいのかがわからない。それぐらい衝撃的だった。
「リビ」
ニケの声が近づいてくる。慌てていると、汗でもかいたのか眼鏡がずり落ちた。
「ニ、ニケ!な、何があったか知らんが、俺でどうにかなるのならどうにかするけど。いや、違う。こういうのは嬉しいが、もうちょっと待って欲しいと言うか。いや、待たなくてもいいけど。違うっ!」
下を向いたままのリヴィウスの視線の先に、ニケの白い足の先が映りこんだ。
はっとした瞬間、彼女の白い手がその足の上に重なり、そしてその手は彼の顎を取った。
ゆっくり、ゆっくりと顔を上げさせられる。同時に視線もゆっくりと上がっていく。
彼女の白い足。くるぶし。膝。太股。
そこまで来てリヴィウスは咄嗟に目をぎゅっと硬く閉じた。
「う、わ、わかった!ニケ!わかったから、ちょっと待て!」
いつも年の割には冷静な彼にしては珍しく、声を上げた。
しかし、ニケの手はその動きを止めない。
そして、多分、リヴィウスの視線を自分自身へと向けさせられる位置で、その動きを止めた。
目を開きたい衝動に駆られたが、リヴィウスは必死でその欲望と戦った。
「リビ。お願い」
そう耳元で囁かれた途端、リヴィウスの体はふわりと後ろに倒された。
落ちる、と思ったが、手の先に触れた感触で、そこがベッドだと気づいた。
何でいつの間にベッドへ移ったのか、考える間もなく、ふんわりと柔らかい重さが自分の体に重なった。
その感触にびっくりして、それまで硬く閉じていた目を思わず開いてしまった。
しまった!と思ったが、遅かった。
その目に映ったのは、愛しい妻の一糸まとわぬ…