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「おい!バルド!ニール!ニケを砂の皇国へ行かせる。すぐに手配しろ」
「はっ?」
「えっ?」
部屋の戻ってきた途端、そう第一声を発したリヴィウスに対して、優秀な宰相と第一秘書官は素っ頓狂な声を上げた。
「え、えっと、リビ。一体全体どういうことなのか説明してもらっていいかな。何がどうなってニケちゃんが砂の皇国に行く羽目になったんだい」
「そ、そうです。手配しろと言われたらしますが、理由を説明していただかないと」
先ほどまで書類の山と首っ引きで格闘していた二人だったが、それを放り出してリヴィウスの元へと駆け寄った。
当のリヴィウスはその様子を気にすることもなく、執務を再開すべく近くの書類の山から一枚を取り出していた。
「理由?ニケが行きたいって言うからだ。それ以外に何がある」
書類の山を片付けながら二人を見ることなく言い放つリヴィウスに、二人ははあっと大きな溜息をついた。
「そう…。ニケちゃんがね。はい、はい」
「はあ。…わかりました」
リヴィウスのニケに対するべた惚れ具合をよく分かっている二人は、それだけで全てを理解したようだ。
「わかったらさっさとしろ。できれば太子一行が出発するのと同調してニケを送り出したい。…その方が安全だからな」
砂の皇国はこの大国からかなりの距離だ。それだけでなく、砂の皇国自体、道程がお世辞にも良いものとは言えない。いくらニケの体力があろうとも、旅先では何があるかわからないし、ついていくことができないリヴィウスには何かあったとしてもすぐに彼女を助けてやることができない。
すぐにリヴィウスの言わんとしていることを察知した二人は、すぐさまその準備にかかりだした。
「でも、リビ。君、ニケちゃんに甘すぎだよ」
「まったく。大いに同感です」
「は?どこがだ。当然だろ」
甘いことも当然だと言い放つ主に対してあきれ返りつつも、二人は即座に行動を起こした。
= Fin =