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「まただ」
胴着を入れておく個人の棚の前で、ゴウは呟いた。
「どうした、ゴウ」
「いや。たいしたことはないんだ」
そう言って安心させるように笑うゴウを無視して、理央は隣にある彼の棚を覗き込んだ。
「これ!どうしたんだ、ゴウ!」
理央は驚いた様子でゴウに振り返った。
「さあ、な。昨日もこうだったんだ」
「昨日も!?お前、何も言わなかったじゃないか」
「いや、だってそれは。たいしたことじゃないし」
「たいしたことだろ!胴着がぬれてるじゃないか!」
理央が指摘したように、棚にしまっておいたゴウの胴着が、しぼれば水溜りができそうなほど濡れていた。
「まあ、濡れてるだけだし。動いてればすぐに乾くさ」
「だけど!」
「さあ、早く行こうぜ、理央。俺はこんなことより、一秒でも早くお前と手合わせしたいよ」
「でも」
「さっさと着替えようぜ」
なんでもないことのように聞き流されて、理央はそれ以上何も言えなくなってしまった。