Page: 1/3
「私ったら、一時でも理央様への愛を忘れるなんて!弛んでいる証拠だわ!」
メレは自分自身にひどく怒っていた。それというのも、今日見たモリヤとカクシターズ・ブルーの戦いのせいだ。初めて二人が相まみえた時、その時は臨獣殿側・モリヤが明らかに優勢だった。なのに、さっきの戦いは紛れもなく惨敗だ。五毒拳の使い手ともあろうモリヤの圧倒的な負け。それだけでも腹立たしい出来事なのに、それよりももっと腹が立ってしょうがないのは、己の心。
『なんなの、あの動き…。垂直の壁を自由に踊っているみたい。あそこはモリヤの世界なのに完璧なテクニック。素晴らしい美しさだわ』
--信じられない…
怒りは絶望へと変わっていく。
理央への愛は、あの時から何一つ変わってはいない。薄れることも、疑うことさえ、ただの一度だってあり得ない。
けれども、あの一瞬。確かに目を奪われたのだ。まるで青い華が咲いたかのような、圧倒的なまでのテクニックに。
普通の女であれば、生涯を共に誓った相手がいようとも、アイドルの応援をするかのように少し余所見をしようが、別段、気に留めることもないだろう。寧ろ、そんなことは誰だってあることだし、しょうがないことだとも言える。だがしかし、メレは普通の女ではないし、普通でありたいとも思っていない。
だからこそ、彼女はこれほどまでも怒り、意気消沈してしまうのだ。
「…修行をし直そう。それしかないわ」
新たな決意をし、メレはとある場所へと向かった。