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それは雨から生まれたもの… 「何を見ているの?」 正樹は後ろから紗江を抱きしめた。腰に回された腕に触れながら肩越しに正樹を見上げる。こうやって見ると彼の睫毛が意外と長いのがわかる。 「雨をね、見ていたの」 「雨を?」 「そう、雨を」 紗江は視線の先を窓の外でいまだに降り続く雨に向けた。