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「あっ」
鈴子は小さく叫んだ。
自分の身に何が起こっているのか、一瞬、めまいを起こしかけた。しかし、幼いながらしっかりしている彼女はその場に倒れることを拒んだ。
落ち着いて。よく考えるのよ。何かの病気かもしれないけど、まだ立っていられるし、ちょっとびっくりしたけど頭もはっきりしてる。まず、深呼吸。
鈴子は胸に手をやって、大きく二回、息を吸ってゆっくりと吐いた。
どうしたらいいだろう。とにかく、まず、ここから出なくちゃ。でも、このままだと、汚しちゃうかもしれないし。どうしよう。
鈴子は辺りを見渡した。しかし、この狭い空間に彼女の悩みを解決できそうなものはあまりにも数が少ない。それでも、彼女は考えた。
これで押さえておけば大丈夫かな。あ、でも、どうやって歩こう。でも、とにかく、ここから出なくちゃ。そして、それから、どうしよう。
ふっと鈴子の脳裏に津軽の顔が浮かんだ。彼に相談すれば、どうしてか、全てのことが何とかなるような気がしてならない。
でも、こればかりは。
鈴子は、今回ばかりは津軽に相談するのをためらった。
じゃあ、誰に。
身寄りのない彼女に、プライベートなことを相談する相手はあまりにも少ない。
そんな時、ふと、津軽の母を思い出した。
そうだ。津軽のお母さん。あ!これ、もしかして、あの時言ってたことじゃ…。
さっと身なりだけを整えて、鈴子はすっと扉を開けた。