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「ホントに俺みたいなおじさんでいいの?」
何度目の問いかけだろう。普通ならうんざりするであろう度重なる問いに、それでも彼女は彼の不安を払拭するように微笑みかけた。
「さっきも言ったでしょ。私がいいって言ってるんだからいいんです」
「でもさあ。嵐ちゃん。このままいっちゃったら君の将来がさ」
「私の将来はボスと、…喜一さんとともにあるんです」
はっきりきっぱりとそう言われ、彼は目を見開いて顔を赤くした。
「いや、まあ、そう言われるとあれなんだけど…」
そう言った後、まだぶつぶつと、「でもどう見たって年の差が」とか「もう若作りもできねぇし」など言っている彼に対して、彼女はぐいっと彼を引き寄せてその口を自分の口で強引に閉じた。
彼女から仕掛けたはずなのに、いつしか彼のペースになり、彼女の口からは甘い吐息が漏れた。
「はっ、ふぅ…。ボス、これ以上待たせると…」
「ん。そうだな。んじゃまあ、行くか」
さっきまで熱い舌を絡めあっていたはずなのに、彼はもういつもの飄々とした雰囲気をまとっている。それが彼女にはいつも悔しい。
「ボスはずるい」
「ん?なんか言った、嵐ちゃん」
「何でもないですっ!」
何故彼女がちょっと怒り気味なのかわからないまま、彼は彼女に左の腕を差し出した。その腕に彼女が自分の右腕を絡める。
この扉の向こうで、二人は病める時も健やかなる時も、永久に一緒にいることを誓う。
= Fin =