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でっかいさんとちっさいさんはとっても仲良し。でっかいさんは名前のとおり大きな体を、ちっさいさんは名前のとおり小さな体をしていました。そんな正反対の二人はなぜかいつも一緒。力仕事や高いところの物を取るのはでっかいさん、細かい仕事やすきまに落ちたものを取るのはちっさいさんというふうに、二人はいつも助け合って仲良くしていました。
ある日のこと。いつも仲の良い二人がはじめて大げんかをしてしまいました。
「もう、君とは絶交だ!」
でっかいさんは右へプイ。
「こっちこそ、君とは絶交だ!」
ちっさいさんは左へプイ。
そして、でっかいさんは丘の向こうにある自分の家へ、ちっさいさんも反対のほうにある自分の家へ、ずんずんと歩いていってしまいました。家につくまで二人とも一度だって後ろを振り返りませんでした。
家についてからも二人はまだぷりぷり怒っていました。
「なんだい!ちっさいさんのやつ!」
でっかいさんはテーブルをドン!
「なんだい!でっかいさんのやつ!」
ちっさいさんはテーブルをトン!
あまりにも怒りすぎたので何だかおなかがへってきました。そこで二人は、ごはんを食べようといつものように食事の用意を始めました。
『あっ!』
いつもはお皿を担当しているでっかいさんは、なぜか二人分のお皿をテーブルに並べていました。そして、いつもは料理を担当しているちっさいさんも、いつの間にか二人分のごはんを作っていました。でっかいさんの家にはテーブルにあふれんばかりのお皿が並び、ちっさいさんの家には一人ではとても食べきれないほどの料理ができあがっていたのです。
「なんだい!あんなやつ知るもんか!全部のお皿の上にパンをのせてやる!」
ポンポンポンポンポン。
「なんだい!あんなやつ知るもんか!一人で全部食べてやる!」
むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ。
最初はいきおいよく食べていた二人も、いつしか手が止まりため息ばかり。
『はぁっ、どうしてけんかなんかしちゃったんだろう…。』
けんかの理由を思い出そうとしても、今じゃなんだったのかちっとも思い出せません。それよりも『絶交だ!』って言ってしまったことばかり思い出してしまうのです。
『はぁっ、なんであんなこと、言っちゃったんだろう…。』
悲しくて二人はとうとう泣き出してしまいました。けれど、泣けば泣くほど悲しさはますばかり。泣きすぎて頭はガンガンするし、悲しくて胸はキュウキュウしていました。
『そうだ!仲直りしよう!』
そう思いついた二人はいきおいよく家から飛び出しました。けれど、仲直りしようと思ってみたものの、どうすればいいのかぜんぜんわかりません。そこで、でっかいさんは木の上でおしゃべりしているとりさんに、ちっさいさんは道で列をつくって歩いているありさんにたずねることにしました。
「とりさん、とりさん。仲直りってどうすればできるのかな?どうすればまたちっさいさんと仲良くなれるのかな?」
「ありさん、ありさん。仲直りってどうすればできるのかな?どうすればまたでっかいさんと仲良くなれるのかな?」
とりさんとありさんは二人に向かってこう言いました。
『そんなの簡単!ごめんなさいってあやまればいいのさ!』
それだけ言うと、とりさんはでっかいさんを無視してまたおしゃべりを始め、ありさんはちっさいさんを追い越してまた歩き出してしまいました。
そう言われても二人ともごめんなさいと言ったことがありませんでした。ためしに『ごめんなさい』と言ってみましたが、口がパクパク開くだけで声が出ません。頭はますますガンガンするし、胸はもっとキュウキュウしてきました。
『やっぱりちゃんと仲直りしよう!』
不安でいっぱいでしたが、どうしても仲直りしたい二人はお互いの家を訪ねることにしたのです。そして、でっかいさんはちっさいさんの家へ、ちっさいさんはでっかいさんの家へと歩き出しました。
互いの家のちょうど半分くらいにある丘の上に来たときのこと。二人はばったりと出会ってしまいました。でっかいさんもちっさいさんもびっくり!だって、こんなとこで会うなんて思っていなかったのですから。
「あ、あの…。」
でっかいさんは上を向いてそわそわ。
「え、えっと…。」
ちっさいさんは下を向いてもじもじ。
『ごめんなさい』って何度も何度も頭の中で練習したのに、相手の顔を見るとなぜかうまく言えません。このまま回れ右してここから逃げ出したくてしようがありません。けれど、もしここで帰ってしまったら、ずっと仲直りできないかもしれないのです。
『そんなのは嫌だ!』
二人はプルプルと頭をふり、ぐっと両手をにぎりしめ大きく息を吸い込みました。そして、でっかいさんは下に見えるちっさいさんに向かって、ちっさいさんは上に見えるでっかいさんに向かって勇気を出して言いました。
「ちっさいさん、ごめんなさい!」
「でっかいさん、ごめんなさい!」
自分が言った言葉が相手から聞こえてきました。そう、二人とも仲直りしたかったのです。
「あははははっ!」
でっかいさんは涙を流しながら大きな声で笑い出しました。
「ふふふふふっ!」
ちっさいさんも涙を流しながら嬉しそうに笑い出しました。
二人が笑いながら空を見上げると、そこにはでっかいさんみたいな大きい雲とちっさいさんみたいな小さい雲が青い空の中で一つに重なっているのが見えました。
= Fin =